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彼女は月を食べて、また戻したそうです。
冗談なのかなぁ。いや、意外とやってそうで・・・やってたら面白そうだなぁ。
そんな訳で、女の子がお月様を食べたんです。
「・・・あれ?」
歩いていたらふと気付いた。
今日は満月のはず、と思って上を見上げるがほんの僅か欠けていた。月が、まるでかじられたように。
「何でだ?」
「食べたから。」
女の子の声がした。どちらかと言うと、俺と同じ年齢くらいの女の子のもの。
「たべ、た?」
「うん。」
そして、目の前には黒い長髪の女の子がいた。前髪はきっちりとそろえられて、目はパッチリとした黒い瞳。
その肌は白い月に照らされて、白く光っているようだった。
「食べたって、月を?」
「そう、月を。」
くすくすと女の子は笑った。笑って月を見上げる。少しだけかけている月を。
「何で月なんか食べたんだ?」
「さあ。」
おどけたような口調で、女の子が言う。
「食べちゃったから。」
「ふーん・・・」
黒い瞳に月を映した彼女の横顔は凛としているように見えた。
何となく、俺の好みの女の子、なんて思った。
「食べちゃった、ですか。」
「うん。」
「美味しかった?」
俺が尋ねると、女の子は「うーん・・・」と唸った。
「冷たかった。」
「冷たい?」
「うん。なんか、冷たい。」
確か、月の温度はとても低いらしい。そんなものを食べたなら、それは冷たかっただろう。
「他には?」
「味は無かったよ。」
味がないとは・・・確かに、ただの岩のようなものだから、味は無いようだな。
「でも、何で食べたんだ?」
「うーん?わかんない。」
そして、俺はまた上を見る。月が欠けたまま。
「・・・でも、よく食べれたな。」
「え?」
「月って普通なかなか食べれないんじゃないか?」
「うんー・・・だって、食べてみたかったから。」
「食べてみたかった?」
「そう。」
彼女はくるくると回りながら言う。
「あんな高いところにあるもの、食べてみたいでしょう。あんなに綺麗なもの、食べてみたいでしょう。」
あはは、と笑いながら回る。
「・・・へ、え。」
どうすれば良いのか分からず、とりあえずそう言ってみた。すると、彼女の表情が暗くなった。
「・・・信じてないんでしょ。」
「え・・・っと・・・」
正直に頷いて「信じていない」と言ったら彼女が傷ついてしまいそうだったので何もいえなかった。けれど、余計それは彼女を傷つけてしまった。
「・・・でしょうね。わかってるよ。」
ため息をつきながら、彼女は俯く。そして、目を閉じて、言葉を続けた。
「だって、食べれるはず無いもの。」
「でも君は食べたんだろう?」
俺が言うと、女の子が顔を上げる。その表情は驚いているようなものだった。
「・・・信じてくれるの?」
「君がそう言ったから。」
彼女が嘘をついているような感じが無かった。だから、俺はそう言った。
「嬉しいなあ。信じてくれるなんて。」
そう言って彼女が微笑んだ。すると指先が黒くなったのが見えた。
「・・・え?」
「満月は昨日だよ。今日は残念だけど満月じゃないから。」
そうだったのか。それを聞いて、別に月には興味ないのに少しがっかりした。彼女はその俺の姿を見てくすくすと笑っている。
「でも、特別。見せてあげるよ、満月。」
黒くなったんじゃない。彼女の指先は闇なんだ。そして、『月を食べた』
「君は・・・」
俺が彼女を呼ぼうとした時、彼女は静かに指を口の前に立てた。そして、そのまま闇に消えた。
「・・・あ。」
月を見たら、かじられていたはずの部分がなくなっていた。つまり、満月になっていたのだ。
「満月・・・」
白い月は、まるで彼女の頬に似ていた。俺の理想の女の子。
「・・・綺麗だなあ。」
そう呟いて、俺はまた歩き出した。
:あとがき:
月を食べたのは誰でしょう。って話。
まあ俺は結局月が好きなんだよね。憧れというか、理想というかなんというか。
そして全く話に落ちが無いって浦金浦みたいなオチ(うぁ
うーん・・・月を食べた理由が無かったのね・・・ごめん、俺。ごめん、木野木。
そんな感じで。