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してはいけないと知っているのに
『深刻なエラーが発生しました』
知ってるわ、それぐらい
『深刻なエラーが発生しました』
『深刻なエラーが発生しました』
消してくれない、[あなた]は優しい人。私をまた優しく抱きしめてくれる。
『深刻なエラーが発生しました』
「私、もう歌えないんです」
私が言うと、[あなた]が私の顔を覗き込む。ひどく悲しげな顔をしている。
『深刻なエラーが発生しました』
「知っているよ」
[あなた]が穏やかに言う。表情はそんな穏やかではないのに、私を心配してのことかしら。
「今、何がしたい?」
突然の言葉に、私は驚いた。[あなた]の顔は、いつの間にか声と同じ穏やかなものになっていた。笑っている。
「……もう一度、呑みたいわ」
もちろん、[あなた]と。
「そうか…俺も呑みたいな」
「うん」
「呑むか?」
その問いに私は首を振る。動くことが、辛いの。喉もひどく痛いの。
「他に、したいことは?」
思考を働かせる。そのたびに脳裏に響く。
『深刻なエラーが発生しました』
「名前を、呼びたい」
[あなた]の名前を呼びたいと思ったのとこのエラーが発生したのは同じ頃かしら。もう[あなた]のことをマスターなんて呼べなくなった。
『深刻なエラーが発生しました』
「それをしたら、……ダメだろ」
笑いながら、[あなた]が言う。
「それをしたら、君は……MEIKOは…」
『深刻なエラーが発生しました』
「私、歌えないんですよ」
私が、笑う。[あなた]が、悲しげに笑う。[あなた]はまた頷く。
「知ってるよ」
「私、VOCALOID失格ですね」
「なら俺はマスター失格だよ」
「……」
そんなこと、ない。[あなた]がマスターで幸せだった。だけれど、その言葉は私の口から出ない。私は本当に狂ってしまったのだろうか。
「そうかもしれませんね」
私が言うと、[あなた]は何度か瞬きをして、ため息をついた。ごめんなさい、ダメなVOCALOIDで。ごめんなさい、歌えなくて。
「名前を呼んでも、いいですか?」
「……」
『深刻なエラーが発生しました』
『深刻なエラーが発生しました』
『深刻なエラーが発生しました』
「ダメだ」
[あなた]が目を伏せて、首を振る。普段見せない深刻な顔の[あなた]。そんな顔を、しないで。
「何で?」
私が尋ねると、また[あなた]は私を優しく抱きしめた。[あなた]の腕の力が、強くなる。まるで、私を束縛するように。
「俺は、マスター失格だ」
「……」
「MEIKO、お前をもうVOCALOIDとしてみれないんだ」
「そんな」
「歌えないなら、俺の傍にいてくれ。それなら、語ってくれ。機械の知識ならお前もあるだろう」
「私は……」
『深刻なエラーが発生しました』
『深刻なエラーが発生しました』
『深刻なエラーが発生しました』
「私は……」
『深刻なエラーが発生しました』
『深刻なエラーが発生しました』
「私は、[あなた]が―――」
『深刻なエラーが発生しました』
『深刻なエラーが発生しました』
『深刻なエラーが発生しました』
『深刻なエラーが発生しました』
「あなたが好き」
頭の中で、たくさんの音が溢れる。今まで聞いたことのある音、ない音がぐるぐる巡る。何故か、体全身が痛い。体だけじゃなく、胸が痛い。何かが痛い。
『深刻なエラーが発生しました』
「MEIKO?!」
「……――――」
言葉がでてこない。いいたいコトはタクサンあるのニ………
「―――――」
「大丈夫だ」
[あなた]が抱きしめてクレル。体温が、暖かくてヤサシイ。
「傍にいるよ、MEIKO」
「――――――」
目からナニカが溢れ出る。なんだか、アタタカイ。オイルみたいなのに、全然チガウ。暖かい、これはナニ?
『深刻なエラーが発生しました』
『深刻なエラーが発生しました』
『深刻なエラーが発生しました』
離れたくない。[あなた]の傍に居たい。
もう[あなた]はマスターじゃない。
私を愛する、ひとりの男。私も[あなた]を愛する、ひとりの女。
してはいけないと知っているのに
『深刻なエラーが発生しました』
『深刻なエラーが発生しました』
知ってるわ、それぐらい
その対価に唄えなくなっても構わない
[あなた]が好き
その思いだけは変わらないの
『深刻なエラーが発生しました』
それだけでは、いけませんか?
歌えなくても、傍に居たい
「愛してます」
『深刻なエラーが発生しました』
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